コーヒー豆は、もとをたどると赤い果実(コーヒーチェリー)の中にある種です。
その実から果肉や皮を取り除いて、焙煎する前の生豆にするまでの工程を「精製」と呼びます。
何を、どの順番で取り除き、どう乾かすかによって、ウォッシュド、ナチュラル、ハニーといった方法に分かれ、同じ産地の豆でも味の出方が変わります。
まず、コーヒーの実の中身を知っておく
精製方法の違いは、実のどの層をいつ取り除くかの違いです。
外側から順に並べると、次のようになります。

| 層(外側から) | どんなものか |
|---|---|
| 外皮 | 熟すと赤くなる実の皮 |
| 果肉 | 外皮の内側にある甘みのある部分 |
| ミューシレージ | 果肉とパーチメントの間にある、桃の種の周りのような粘液質 |
| パーチメント | 種を包む、かたい内果皮 |
| シルバースキン | パーチメントの内側にある薄い銀皮 |
| 生豆 | いちばん内側の種(1つの実に向かい合って入っている) |
主な精製方法は、大きく水洗式(ウォッシュド)・非水洗式(ナチュラル)・スマトラ式(セミウォッシュド)の3つに分けられます。
それぞれの工程を順に見ていきます。
ウォッシュド(水洗式):果肉を除き、水で洗ってから乾かす
ウォッシュドは、果肉を取り除き、豆についたミューシレージを発酵させてから、きれいな水で洗って乾かす方法です。
- 選別: 手摘みした実を水槽に入れ、沈んだ完熟の実を選ぶ
- 果肉除去: 機械で外皮と果肉を取り除き、ミューシレージの付いたパーチメントの状態にする
- 発酵と水洗い: 1日発酵させてから水で洗い、ミューシレージを落とす
- 乾燥: 天日または機械で乾かす(この時点ではまだパーチメントが付いている)
- 脱穀: 機械でパーチメントを除き、生豆を取り出す
ウォッシュドの味は一般に、透明感のあるフルーティな酸味、すっきりとした印象の味わいになる傾向があります。
見た目にも特徴があり、生豆は全体的に緑色っぽく、焙煎した豆はセンターカット(豆の中央の溝)が白っぽい傾向があります。

ナチュラル(非水洗式):実のまま天日で乾かす
ナチュラルは、果肉が付いたままの実を天日で乾燥させてから、脱穀して豆を取り出す方法です。

- 選別: 収穫した実を、色を見ながら完熟の実にさらに選り分ける
- 乾燥: 乾燥場に広げて2週間程度天日で乾かし、毎日かき混ぜてむらなく乾かして、夜は湿気を防ぐためにシートで覆う
- 脱穀: 機械で果肉とパーチメントを取り除き、生豆を取り出す
味は一般に濃厚でコクのあるコーヒー本来の風味になりやすく、生豆は全体的に茶色っぽく、焙煎豆はセンターカットが茶色っぽいのが特徴です。
ナチュラルと同じ方法は、「アンウォッシュド」「非水洗式」「ドライ」とも呼ばれます。
袋の表記が違っても同じ方法を指していることがあるので、名前の対応を覚えておくと迷いません。
スマトラ式(セミウォッシュド):半乾きのまま脱穀する
スマトラ式は、実を水洗いしてから外皮と果肉を除き、ミューシレージを完全には取り除かずに乾かす方法です。
最初に実を水洗いしますが、果肉を取り除く作業そのものには水を使いません。
- 果肉除去: 水洗いした実から、水を使わずに果肉を取り除く
- 乾燥: ミューシレージが多少付いたまま、約半日天日で乾かす
- 脱穀: 水分を含んだまま脱穀して、生豆を取り出す
- 再乾燥: もう一度乾かす
スマトラ式の生豆は一般に、オリーブのような緑色で、豆がふぞろいになり、焙煎豆は形や表面がふぞろいで「ヴィンテージ赤ワインのような個性的な風味」が特徴です。
インドネシアのマンデリンなど、スマトラ島の豆の味の傾向はコーヒー豆の産地別の特徴にまとめています。
ハニープロセス:粘液質の残し方で段階が分かれる
ハニープロセスは、中米で行われているセミウォッシュドの改良型にあたる方法です。
コスタリカで行われている方法は、ウォッシュドより水の使用量を抑え、外皮と果肉を取り除くときに少し果肉を残すもので、果肉の成分が豆の中に凝縮され、蜂蜜のような甘さと深いコクが出やすい傾向があります。
ハニープロセスは、ミューシレージの除去率を機械で調整する方法でもあり、粘液層がスペイン語で「ミエル(ハチミツ)」と呼ばれることが名前の由来です。
除去する割合ごとに、呼び名が分かれています。
| 呼び名 | ミューシレージを除く割合(目安) |
|---|---|
| ブラックハニー | 0% |
| レッドハニー | 〜25% |
| イエローハニー | 50% |
| ゴールデンハニー | 75〜85% |
| ホワイトハニー | 90% |
粘液層を残すほど、濃く、ふくよかな甘みを感じやすくなると言われています。
目安として、粘液質を多く残すブラックに近いほど実ごと乾かすナチュラルの側に、ほとんど除くホワイトに近いほど洗って乾かすウォッシュドの側に寄る、と考えると段階の意味がつかみやすくなります。
アナエロビック(嫌気発酵):精製に発酵の工程を加える
最近の専門店では、「アナエロビック」「嫌気発酵」と書かれた豆を見かけることもあります。
これはコーヒー豆の精製過程に発酵のプロセスを加えたもので、ワインの醸造で使われる、密閉して空気に触れさせない発酵の手法をもとにしています。
温度や湿度、熟成時間によって風味が大きく変わるため、手作業での丁寧な管理が求められます。
呼び名の覚え書き
水洗式=ウォッシュド/非水洗式=ナチュラル(アンウォッシュド、ドライ)/スマトラ式=セミウォッシュド/ハニープロセス=セミウォッシュドの改良型/アナエロビック=嫌気発酵
精製のあとに行われる選別
精製で取り出された生豆は、出荷の前に選別されます。
等級の基準は生産国ごとに違いますが、「外観」と「風味」の2つで鑑定する点は共通しています。
| 見るところ | 方法 |
|---|---|
| 豆の大きさ | 穴のあいたふるい(スクリーン)で、大粒から小粒まで仕分ける |
| 欠点豆 | 不完全な豆や混ざった異物の数を、マットの上で数えて目で確かめる |
| 風味 | カップテストで、特に「異味異臭」がないかを確かめる |
ブラジルのコーヒーは、最高格付けの「サントスNo.2」から「サントスNo.8」までの7つの段階に分かれています。
袋に書かれた「No.2」や「スプレモ」などの言葉は、精製方法ではなく、この選別でついた等級や規格の名前です。
精製方法を並べて比べる
ここまでの説明を、1つの表にまとめます。
「―」は、決まった傾向を特に挙げていない欄です。
| 精製方法 | 乾かすときの状態 | 水の使い方 | 味の傾向 | 生豆の色 |
|---|---|---|---|---|
| ウォッシュド | パーチメントの状態(果肉・粘液質なし) | 水槽で選別し、水で洗う | 透明感のあるフルーティな酸味、すっきり | 緑色っぽい |
| ナチュラル | 実のまま | 洗わない | 濃厚でコクのあるコーヒー本来の風味 | 茶色っぽい |
| スマトラ式 | 粘液質が少し残った状態で半乾き | 実を水洗いするが、果肉除去は水を使わない | ヴィンテージ赤ワインのような個性的な風味 | オリーブのような緑 |
| ハニー | 果肉・粘液質を一部残す | ウォッシュドより少ない | 蜂蜜のような甘さと深いコク | ― |
| アナエロビック | (発酵の工程を加える) | ― | 温度・湿度・熟成時間で大きく変わる | ― |
精製方法で決まるのは、酸味のすっきり感やコクの出方といった「味の性格」の方向です。
酸味と苦味の強さそのものは焙煎度で大きく変わるので、精製方法は、焙煎度を決めたあとに「同じ焙煎度の中でどちらの性格が好みか」を選ぶ手がかりとして使うと分かりやすくなります。
同じ国の豆でも、精製で味が変わる
精製方法の違いは、同じ国の豆を比べるとよく分かります。
たとえばブラジルの豆でも、非水洗式なら「甘みを伴った、やわらかな苦味と適度な酸味」、水洗式なら「甘い香りとすっきりした酸味、爽やかな後味」と、精製方法で味の傾向が分かれます。
エチオピアの豆にも同じような違いがあり、産地ごとの例はコーヒー豆の産地別の特徴で読めます。
産地名だけで味を判断すると、精製の違いを見落とすことになるので、気に入った豆があれば、産地と一緒に精製方法も控えておきます。
袋の表記と、好みからの選び方
精製方法は、コーヒーの公正競争規約が袋の一括表示欄に書くよう定めている必要な表示事項には入っていません。
多くは、袋の表や商品説明に「ウォッシュド」「Washed」「水洗式」「ナチュラル」「Natural」などと書かれています。
好みから選ぶときの目安
すっきりした酸味が好き → ウォッシュド
コクと甘い香りがほしい → ナチュラル
その中間の甘さを試したい → ハニー(段階の名前も確認)
個性の強い風味を試したい → スマトラ式、アナエロビック
(味の傾向からみた目安です)
酸味・苦味の好みから焙煎度と産地を合わせて引きたいときは、味の好みで選ぶコーヒー豆の早見表で、精製の目安の列まで含めて整理しています。
同じ精製方法でも、品種や焙煎度によって味は変わり、品種ごとの違いは別の記事「アラビカ種とロブスタ(カネフォラ種)の違い」で扱っています。
精製方法は、2袋を並べて飲むと覚えやすい
説明の言葉だけで違いをつかむのは難しいので、同じ国・同じくらいの焙煎度で、ウォッシュドとナチュラルを1袋ずつ買って飲み比べるのがいちばん早い方法です。

違いを感じた方の精製方法を袋の表記で覚えておけば、次に知らない産地の豆を選ぶときにも使えます。


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