1杯分の粉の量は、全日本コーヒー協会のレシピでは12g、メリタの一つ穴式の説明では約8gと書かれています。
どちらも誤りではなく、湯の量と注ぎ方の考え方が違うために数字が分かれています。
ハンドドリップには「これだけが正しい」という1つの答えはなく、粉・湯・時間の3つをどこかの基準にそろえて、そこから好みへ動かすのが進め方の基本です。
粉の量と湯の量は「比率」でそろえる
レシピを比べるときは、グラム数よりも粉1に対して湯がいくつかを見ると違いがつかめます。
業界団体とドリッパーのメーカーが公開している3つのレシピを並べると、次のようになります。
| レシピ | 粉 | 湯 | 蒸らし | 本番の注ぎ方 | 粉:湯 |
|---|---|---|---|---|---|
| 全日本コーヒー協会(ペーパードリップ) | 中細挽き12g | 160mL(できあがり140mL) | 20mLで20秒ほど | 80mL→40mL→20mLの3回 | 約1:13.3 |
| ハリオ(V60の基本レシピ) | 杯数分 | 粉の量×14 | 粉の量の2倍で30秒 | 粉の量×4を3回 | 1:14 |
| メリタ(一つ穴式) | 約8g(1杯125cc) | 140cc | 粉と同量程度で20〜30秒 | 杯数分を一度に | 1:17.5 |
粉・湯・時間の数字は各社の公式ページの記載どおりで、右端の比率だけはこちらで割り算した値です。
ハリオの比率を全日本コーヒー協会と同じ12gにあてはめると、蒸らし24g+48g×3回=168gになります。
3つのレシピの比率は約1:13〜1:18の幅に収まっています。
最初はどれか1社のレシピに丸ごとそろえると、味が濃い・薄いと感じたときに、どこを変えればよいかが分かりやすくなります。
そろえる道具
ペーパードリップに使う道具は、次の6つです。
- ドリッパーとペーパーフィルター(サイズはドリッパーに合わせる)
- サーバーまたはマグカップ
- ケトル(注ぎ口の細いものだと湯量を調整しやすい)
- スケール(粉と湯の重さを量る)
- タイマー(スマートフォンでも可)
- コーヒー粉(ペーパードリップなら中細挽きが目安)
ドリッパーは円すい形や台形など形が分かれ、形によって湯の落ちる速さが変わります(形ごとの特徴はドリッパーの種類と違いが参考になります)。
ケトルとスケールがなくても淹れられますが、湯量を毎回そろえたいなら、スケールで重さを量るのが確実です(選ぶときの確認点はハンドドリップ用ケトルとスケールの選び方が参考になります)。

1杯分の手順(全日本コーヒー協会のレシピ)
ここでは、比率の基準として扱いやすい全日本コーヒー協会のペーパードリップのレシピ(できあがり140mL)を手順にしました。
湯を沸かし、95℃前後になるまで少し置きます。
沸騰直後の湯をそのまま注がないのがポイントです。
ペーパーフィルターのシール目を交互に折り曲げ、ドリッパーにセットします。
ハリオは、ペーパー全体を湯で湿らせてにおいを落とし、器具を温める方法を紹介しています(サーバーに落ちた湯は捨てます)。
中細挽きの粉12gを入れ、ドリッパーを軽くゆすって表面を平らにします。
粉の中心に静かに20mLをのせ、20秒ほど待ちます。
メリタも、蒸らすことで粉がふくらむと説明しています。
1円玉くらいの小さな円を描くように、80mL→40mL→20mLの順に注ぎます。
2回目以降は、ドリッパーの中の湯が3分の1ほど減ったところで次を注ぎます。
湯が落ちたらドリッパーを外して完成です。
同協会は、できあがりの温度は約65℃が理想としています。

1杯で淹れる量を増やすときは、粉と湯の比率を保ったまま掛け算すると計算しやすくなります。
たとえば2杯分なら粉24g・湯320mLが計算上の目安で、濃さは飲んでみて調整します。
落ちきるまでの時間で、濃さの見当をつける
同じ粉と湯の量でも、湯が落ちきるまでの時間が変わると味が変わります。
全日本コーヒー協会は、コーヒーの成分には溶け出しやすいものと溶けにくいものがあるため、抽出時間が短いと酸っぱくて薄く、長いと苦くてエグくなると説明しています。
時間を左右するのは、主に次の3つです。
- 挽き目: 細かいほど湯が通りにくく、時間が延びる
- 注ぐ速さ: 一度に多く注ぐと、湯がたまって時間が延びやすい
- ドリッパーの穴: 穴の数や大きさで、湯の抜ける速さが変わる
ペーパードリップの挽き目の目安は中細挽きで、同協会は粒の大きさを「グラニュー糖」くらいと表現しています。
また、挽いたときに出る細かすぎる粉(微粉)は、成分の出すぎの原因になりやすいとされています。
ハリオの「3分以内」を時計がわりにして、毎回ほぼ同じ時間で落ちきっているかを見ると、挽き目や注ぎ方のぶれに気づきやすくなります。
蒸らしは、湯の通り道をつくる工程
UCCの解説によると、新鮮な粉ほど炭酸ガスが多く残っていて、そのままだと湯と粉がうまく触れ合いません。
最初に少量の湯をかけてガスを追い出し、粉全体に湯の通り道をつくるのが蒸らしの役割です。

UCCは1杯分の蒸らしの湯量を20ml程度、時間を20秒程度としています。
ハリオのV60は30秒、メリタは20〜30秒と、メーカーで20〜30秒の幅があります。
蒸らしを長く置きすぎると、苦味や渋味が強く出る原因になります(UCC)。
外側のペーパーに直接湯をかけると、湯が粉を通らずに落ちて水っぽい味になりやすいので、注ぐのは粉の中心からにします。
熱湯を扱う作業なので、ケトルやサーバーの取っ手が熱くなる点にも気をつけてください。
ドリッパーやサーバーの耐熱温度、電子レンジ・食洗機が使えるかは素材と製品で違うため、手元の取扱説明書で確かめてください。
湯温は95℃前後を出発点に
全日本コーヒー協会は、沸騰後にポットを火から離し、ぐらぐらしていた湯面が静まった程度の95℃前後を適温としています。
一方、メリタは最適な湯温は豆の種類によって異なるとして、温度を調整してみることをすすめています。
SCA(スペシャルティコーヒー協会)が紹介したカリフォルニア大学デービス校の研究では、業務用のドリップ式抽出機で87℃・90℃・93℃を淹れ比べたとき、濃さと成分の抽出量がそろっていれば、湯温による味の差は小さかったと報告されています。
湯温は抽出の速さを変える要素なので、温度だけを細かく追うより、粉・湯・時間をそろえるほうが味は安定しやすいと考えられます。
焙煎度によって酸味や苦味の出方は大きく変わるため、豆の側から味を動かしたいときは、浅煎り・中煎り・深煎りの違いで焙煎度ごとの傾向を見比べてみてください。
正解が1つでない理由
注ぎ方そのものも、メーカーの設計によって違います。
一度に注ぐか、分けて注ぐか
メリタは蒸らしのあと杯数分を一度に注ぐ方法で、ハリオは3回に分けて渦を描く方法です。
全日本コーヒー協会も、ペーパードリップには1つ穴式と3つ穴式があって抽出の速度が違うとして、「器具にあった湯の注ぎ方をしましょう」と説明しています。
描く円の大きさも違う
描く円の大きさも、同協会は1円玉くらい、ハリオは500円玉くらいと書いています。

使っているドリッパーのメーカーが出しているレシピから始めるのが、いちばん迷いにくい方法です。
淹れたコーヒーが酸っぱい・苦いと感じるときは、挽き目・湯温・時間のどれが原因かを1つずつ切り分けていきます(症状から原因をたどるときはコーヒーが酸っぱい・苦い・薄いときの原因と直し方が参考になります)。
ハンドドリップでよくある疑問
- 2杯分・3杯分にすると、抽出時間は長くなりますか?
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ハリオのV60は、杯数に関係なく3分以内に湯を落としきることを目安にしています。
量が増えても時間を延ばしすぎないのが、同社のレシピの考え方です。
- スケールがないときは、粉をどう量ればいいですか?
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メリタは、同社のメジャースプーンすりきり1杯で約8gとしています。
ハリオの計量スプーンには、すりきり12g・10g・8gの目盛りが付いています。
スプーンの容量は製品ごとに違うので、手元のスプーンが何gかを一度確かめておくと、レシピのグラム数に合わせやすくなります。
- 温度計がないときは、どうすればいいですか?
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全日本コーヒー協会の説明のとおり、沸騰したら火から離し、湯面が静まるまで少し待つのが目安になります。
- ドリッパーやカップは温めたほうがいいですか?
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メリタは、陶磁器やガラスのドリッパーを使うときは湯で温めて抽出温度を安定させることをすすめています。
温めに使った湯は捨ててから粉を入れます。
- ペーパーフィルターの折り方に決まりはありますか?
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底と側面の貼り合わせ部分を、互い違いに折り曲げるのが基本です(全日本コーヒー協会・メリタ)。
メリタは、底が抜けるのを防ぐため底の部分も折り曲げるよう案内しています。
- 豆と粉、どちらで買うのがいいですか?
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鮮度を重視するなら豆、手軽さを重視するなら粉という分かれ方で、それぞれの良い点と気をつけたい点はコーヒー豆の買い方で比べています。
豆で買う場合は、ペーパードリップ向けの中細挽きに挽ける道具が必要です(挽き目を調整できる道具はコーヒーミルの選び方が参考になります)。
3つの数字をメモしておく

最初の1杯は全日本コーヒー協会の12g・160mLか、手元のドリッパーのメーカーのレシピのどちらかで淹れ、その数字を基準として残しておきます。






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