「酸っぱいのは苦手だけど、苦すぎるのも飲みにくい」という好みでも、選ぶ豆の見当はつけられます。
コツは、焙煎度で酸味と苦味の比重を決め、産地と精製で香りやコクを足すと考えることです。
質問は3つで、答えを順にたどると、6つのタイプのどれから豆を選べばよいかが決まります。
表の言葉は産地や焙煎度の一般的な傾向で、実際の味は豆ごとに違います。
3つの質問で、自分のタイプを決める
次の3つに答えると、早見表のどの行から見ればよいかが決まります。
どの答えもピンとこない人は、タイプBから始めると、次に酸味側・苦味側のどちらへ動かすかを決めやすくなります。

質問1:酸味は好きですか、苦手ですか
- 好き、フルーツのような酸味を楽しみたい → タイプA
- どちらでもない、強すぎなければよい → 質問2へ
- 苦手 → タイプC(苦味も強すぎるのが心配なら、タイプBの深い側のシティから)
質問2:苦味やコクは強い方がよいですか
質問1で「どちらでもない」を選んだ人は、苦味の好みで分けます。
- 強くてよい、しっかりした苦味がほしい → タイプC
- ほどほどがよい → タイプB
- 苦味もクセも控えめがよい → タイプF
質問3:ミルクや氷を入れますか
- ミルクを入れる、カフェ・オ・レにする → 質問1・2の答えにかかわらず、タイプD
- 氷を入れてアイスコーヒーにする → タイプE
- ブラックで飲む → 質問1・2で決まったタイプのまま
ミルクや氷を入れる人は、質問3の答えを優先してください。
全日本コーヒー協会は、カフェ・オ・レ向きにフレンチロースト、アイスコーヒー用にフルシティローストまでの焙煎を挙げています。
ミルクや氷で味が薄まることを考えると、ブラックより深めの焙煎から選ぶのが一つの目安です。

好み別のコーヒー豆早見表
焙煎度と飲み方は全日本コーヒー協会「焙煎・配合・粉砕」、産地は同協会「コーヒーの生産地」とUCC「豆の種類と産地について」、精製は同協会「加工処理・選別」の説明をもとに、筆者が6つのタイプに組み合わせました。
「―」は、出典で特に挙げられた傾向がない欄です。
| タイプ | 焙煎度の目安 | 産地の傾向の例 | 精製の目安 | 向く飲み方 |
|---|---|---|---|---|
| A 酸味と香りを楽しみたい | 浅煎り〜中煎り(ミディアム、ハイ) | エチオピア、ケニア、中米 | 水洗式(すっきりした酸味) | ブラック |
| B バランスよく毎日飲みたい | 中煎り(ハイ、シティ) | ブラジル、コロンビア | どちらでも | ブラック |
| C 苦味とコクがほしい | 深煎り(フルシティ、フレンチ) | マンデリン、ブラジル | 非水洗式(コク) | ブラック |
| D ミルクを入れる | 深煎り(フレンチ) | タンザニア、ベトナム | ― | カフェ・オ・レ |
| E アイスコーヒーにする | 深煎り(フルシティ前後) | ― | ― | アイスコーヒー |
| F クセの少ない味がよい | 中煎り(ハイ、シティ) | ブルーマウンテン、エルサルバドル | ― | ブラック |
産地の味は国ごとの大まかな傾向で、同じ国でも農園や精製、焙煎によって変わります(主な産地ごとの味の傾向はコーヒー豆の産地別の特徴)。
タイプごとの選び方
早見表の行ごとに、根拠になった説明と選ぶときのコツを添えます。
A・B:酸味を楽しむ、またはバランスを取る
全日本コーヒー協会は、浅煎りほど酸味が強く、深煎りほど苦味を感じやすいと説明しています。
焙煎度は、浅いライトローストから深いイタリアンローストまで8段階に分かれます(段階ごとの味と向く飲み方は浅煎り・中煎り・深煎りの違い)。
同協会はエチオピアの豆を「小粒ながら強い酸味とコクを兼ね備え、フルーティな香りが味に良いアクセントを添える」と紹介しています。
ケニアの豆も「強い酸味を感じられるのが大きな特徴」「キレがあり、後味もすっきりしている」とされ、酸味を楽しみたいタイプAの入口になります。
UCCがコスタリカを「透明感のある明るい酸味と長く続く甘い余韻」と紹介しているように、中米の豆も酸味を楽しむ候補です。

タイプBは、同協会が「酸味と苦味のバランスが良く、ブレンドのベースにも最適」とするブラジルを中煎りで選ぶのが分かりやすい組み合わせです。
コロンビアも、同協会が「華やかな香りと豊かなコクがありながらも、マイルドな味わいが特徴」とする、毎日飲む豆の候補になる産地です。
C:苦味とコクを求める
インドネシアのマンデリンは、全日本コーヒー協会によると「やわらかな酸味と強い苦味、スパイスのような香り」がある豆です。
深煎りと組み合わせると、苦味とコクの方向がそろいます。
精製では、同協会の説明で濃厚でコクのある風味とされる非水洗式(ナチュラル)の表記も手がかりです。
D・E:ミルクや氷を加える
全日本コーヒー協会は、フレンチローストをカフェ・オ・レなどの欧風の飲み方向き、アイスコーヒー用はフルシティローストまで加熱すると説明しています。
産地では、タンザニア(キリマンジャロ)が「ミルクや砂糖を加えても風味が損なわれず、さまざまな楽しみ方ができる」、ベトナムが「ミルクとも相性が良い」と紹介されています(同協会)。
そこで目安として、ミルクの量が多い飲み方ほど、深めの焙煎を選ぶと覚えておくと迷いにくくなります。
アイスコーヒーは、熱いコーヒーを氷で冷やす方法と水出しで作り方が分かれ、粉の量や待つ時間も変わります(作り方の違いはアイスコーヒーと水出しコーヒーの作り方)。
F:クセの少ない味を求める
ジャマイカのブルーマウンテンは「酸味、甘味などのバランスに優れたクセのない味わい」、エルサルバドルは「穏やかな酸味、やわらかな苦味、ほのかな甘味」とされています(全日本コーヒー協会)。
ブルーマウンテンは限られた地域でしか栽培されない希少な豆なので、日常用にはエルサルバドルなどの中米の豆を中煎りで選ぶのも一つの方法です。
酸味が苦手な人が選ぶときの組み合わせ
「酸味のないコーヒー」を探している人は、質問1で「苦手」を選んだ人と同じで、早見表ではタイプC(苦味が心配ならタイプBのシティ)が入口になります。
焙煎度・産地・精製の3つを、酸味を弱める方向にそろえるのが基本の考え方です。
まず、酸味が前に出やすく、避ける側に回したい組み合わせは次の3つです。
- 浅煎り(ライト、シナモン)の豆: 全日本コーヒー協会の説明では、酸味がいちばん前に出る焙煎度
- 「強い酸味」が特徴として挙げられる産地を浅めの焙煎で: エチオピア、ケニア、タンザニアなど
- 「フルーティ」「明るい酸味」と説明された豆: 酸味を楽しむ方向で選ばれた豆であることが多い
反対に、深煎りの豆、ブラジルやマンデリンのように苦味やバランスが挙げられる産地、「コク」「ビター」と説明された豆は、酸味を控えたい人が選びやすい組み合わせです。
深煎りは酸味が弱まる方向ですが、残り方は豆によって違います(全日本コーヒー協会も、豆の種類によって違いが出るとしています)。
酸味の感じ方は人によって違うので、深煎りの豆を少量から試して、苦味とのつり合いを見ていくと失敗が少なくなります。
ブレンドから選ぶときの目安
ストレートの豆より、店のブレンドから選びたい人もいます。
全日本コーヒー協会が挙げている配合の例を見ると、味の方向ごとに入っている産地に特徴があります。
| 目指す味 | 配合の例に入っている産地 | 早見表のタイプ(筆者による対応づけ) |
|---|---|---|
| 酸味のある配合 | コロンビア、ブラジル、グアテマラ、モカ | A |
| 苦味のある配合 | コロンビア、ブラジル、キリマンジャロ、ロブスタ | C |
| コクのある配合 | コロンビア、グアテマラ、マンデリン、ブラジル | C |
| ポピュラーな配合 | コロンビア、ブラジル、モカ、ロブスタ | B |
ブレンドの袋や店の説明に書かれた産地名と焙煎度を、配合の例と早見表の両方に当てはめると、飲む前でも味の方向をある程度予想できます。
「○○ブレンド」と名乗れるのは、その産地の豆を30%以上使っている場合に限られます(コーヒーの公正競争規約の施行規則)。
好みを言葉にする手がかり
「酸っぱい」「苦い」だけでなく、もう少し細かい言葉を持っておくと、店で好みを伝えるときに役立ちます。
「酸味がある=質の低いコーヒー」ではありません。
日本スペシャルティコーヒー協会(SCAJ)は、スペシャルティコーヒーの評価で、酸味を「強さ」ではなく「質」で評価するとしています。
好ましい酸味と、苦手に感じる酸っぱさは別のもので、酸味の少なさだけで豆のよしあしは決まりません。
SCAJの評価項目には、酸味のほかに風味のきれいさ、甘さ、口に含んだ質感、後味、バランスなどがあります。
味を表す言葉の見本としては、SCA(スペシャルティコーヒー協会)とWorld Coffee Researchが2016年に改訂した「コーヒーテイスターズ・フレーバーホイール」が知られています。
1995年に作られたもので、改訂版はWorld Coffee Researchの官能評価用語集(センサリー・レキシコン)をもとにしています。
専門店の説明にある「ベリーのような」「ナッツのような」といった言葉は、こうした味の言葉の体系を背景にしていることがあります。
酸っぱい・苦いの原因が、豆とは限らない
早見表どおりに選んでも、思ったより酸っぱい・苦いと感じることがあります。
同じ豆でも、挽き目、粉の量、お湯の温度、淹れる時間で味の出方は変わるためです。

たとえばUCCは、ペーパードリップの湯温を92〜96℃、粉を1杯10〜12gとしています。
蒸らしの時間や注ぎ方まで含めた手順は、ハンドドリップのやり方で確かめられます。
全日本コーヒー協会は、挽いたときの細かい粉(微粉)が過剰抽出の原因になりやすいと説明しています。
豆を替える前に、淹れ方がこの目安から大きく外れていないかを見直すと、豆選びの失敗と淹れ方の失敗を切り分けられます。
酸っぱい・苦い・薄いといった症状は、挽き目・湯温・粉の量のどれを動かすかで直し方が変わります(症状から原因をたどるならコーヒーが酸っぱい・苦い・薄いときの原因と直し方)。
飲み方が変われば、引く行も変わる
早見表のタイプは、味の好みだけでなく飲み方でも決まります。
夏はアイスコーヒーにする、朝だけカフェ・オ・レにするといった変化があれば、質問3から答え直すだけで、見る行が切り替わります。
同じ人でも季節や時間帯でタイプを使い分けてよく、1つのタイプに決め打ちする必要はありません。
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