コーヒーの「品種」という言葉は、2つの段階で使われています。
1つはアラビカ種・カネフォラ種(ロブスタ)という植物の「種」、もう1つはその下にあるティピカ、ブルボン、ゲイシャといった「品種」です。
どちらの段階の話なのかを分けて読むと、袋や商品説明の言葉がずっと分かりやすくなります。
飲まれているコーヒーは、ほぼ2つの種
コーヒーの仲間(コーヒーノキ属)には、全部で131の種があります。
そのうち、飲用として栽培され流通しているのはアラビカ種とカネフォラ種の2つです。
このほかにリベリカ種もありますが、商用としてはほとんど扱われません。
リベリカ種はアフリカのリベリアが原産地で、生産国での消費のほかはヨーロッパ向けの輸出が多く、日本ではほとんどなじみがない品種です。
アラビカ種とカネフォラ種の比較
2つの種の違いを並べます。
| 比べるところ | アラビカ種 | カネフォラ種(ロブスタ) |
|---|---|---|
| 原産地 | エチオピア | ビクトリア湖周辺から西アフリカ |
| 木の高さ | 〜3m | 3〜6m |
| 生産量に占める割合 | 6割弱(58〜63%程度) | 4割強(37〜42%程度) |
| 育つ場所 | 低地から高地まで | 低地の湿潤な土地 |
| 病害虫 | サビ病などに弱い | 強健で、病害虫にも強い |
| 受粉 | 自家稔性(同じ株の花どうしで実をつける) | 自家不稔性(ほかの株の花粉が必要) |
| 主な使われ方 | ストレートの飲用 | ブレンド、インスタントコーヒー |
生産量の割合には幅があるので、数字は目安として見てください。

種の違いが味の土台になり、その上に産地・精製・焙煎度の違いが重なる、という全体の関係はコーヒー豆の選び方で整理しています。
受粉のしかたが、品種の数に関わる
アラビカ種は基本的に自家受粉し、それ以外の種は他家受粉です。
ロブスタは1本の木では自分の花を受粉できず、ほかのタイプの木の花粉が必要なので、同じ畑の木どうしが交雑し、ロブスタの農園は遺伝的に均一になることがありません。
その結果、ロブスタは遺伝的な多様性がとても大きい一方で、アラビカ種は世界に広まった木の数がもともと少なく、多様性が狭いのが課題になっています。
世界の生産の約40%を占めるブラジルでは、栽培品種の97.55%がティピカとブルボンから派生したものです。
味と成分の傾向
ロブスタの木はアラビカに比べて一般に収量が多く、カフェインが多く、糖分が少なく、病害虫にも強い傾向があります。
ロブスタで淹れたコーヒーは、酸味が低く、苦味が強く、より「フルボディ」になることが多いのが特徴です。
カネフォラ種をストレートで味わう機会はまれで、ブレンドやアイスコーヒーなどに多く使われ、深いコクやパンチを与えています。
ロブスタの方がカフェインは多いのですか?
ロブスタは一般に、カフェインを多く含みます。
ただ、1杯のカフェインの量は、豆の種類のほか、使う粉の量や淹れ方でも変わります。
1杯あたりと1日の目安はコーヒーのカフェイン量と1日の摂取量の目安にまとめています。
ロブスタは、どこで飲まれているか
ロブスタを「ロブスタ」と書いた袋で買う機会は少ないものの、ふだんのコーヒーの中には入っていることがあります。
- ブレンド: 配合の一例では、「苦味のある配合」にロブスタ20%、「ポピュラーな配合」に10%が入っています
- インスタントコーヒー: カネフォラ種の主な用途の1つが、インスタントコーヒーの原料です
- アイスコーヒー: ブレンドと並んで、アイスコーヒーにも多く使われます

世界の生産に占めるロブスタの割合は、1990年代はじめの約3割から約4割へと増えてきました。
ベトナム、ブラジル、インドネシア、ウガンダ、インド、コートジボワールの6か国で、世界のロブスタの95%が生産されています。
日本の輸入量で2位のベトナムが世界最大のロブスタの生産国であることは、コーヒー豆の産地別の特徴でも触れています。
アラビカ種の主な品種名
専門店の豆の説明でよく見るのは、アラビカ種の中の品種の名前です。
出荷を目的に栽培されているアラビカ種の品種は20種類以上あります。
| 品種名 | どんな品種か |
|---|---|
| ティピカ | アラビカ種の一品種で、バランスの取れた風味の良さで知られる/収量が少なく、サビ病にとても弱い |
| ブルボン | アラビカ種の代表的な品種の1つで、しっかりしたコクと甘みのある味わい |
| カトゥーラ | ブルボンの自然突然変異で、木が小さく育つ品種(1915〜1918年ごろにブラジルで発見) |
| SL28 | 1930年代にケニアで選抜された品種で、乾燥に強く、カップの品質の可能性が高い |
| ゲイシャ | エチオピアのゲイシャ村に自生していたことが名前の由来で、フルーティーでフローラルな香りなどが国際的に高く評価されている |
ティピカとブルボン:多くの品種のもとになった2つ
ブルボン種は、ティピカ種がフランス領レユニオン島(当時のブルボン島)に持ち込まれて突然変異して生まれた品種だという見方があります。
ブルーマウンテンコーヒーも、ティピカ種の突然変異から生まれたという見方があります。
説明の違いに注意
一方で最近の遺伝子の研究からは、エチオピアからイエメンに持ち出された種はティピカとブルボンの両方に近いもので、ブルボン島にはイエメンから種が持ち込まれてブルボンの系統になったという見方も出ています。
ブルボンがティピカから生まれたのか、別の系統なのかは、説明が分かれています。
どちらの説明でも、今のアラビカ種の多くがこの2つの系統から広がったという点は同じです。
ゲイシャ:品評会で知られるようになった品種
ゲイシャは1930年代にエチオピアの森で採取され、タンザニアの研究所を経て、1953年に中米の研究機関(CATIE)に持ち込まれました。

1960年代にはサビ病に耐性があるとしてパナマで配布されましたが、枝が折れやすく、あまり植えられなかったとされています。
その後、2005年にパナマの品評会「ベスト・オブ・パナマ」に出品されたことで広く知られるようになりました。
栽培が難しく生産量が少ないため、希少性が高い豆として高値で取引されています。
カティモールなど:ロブスタの性質を取り込んだ品種
アラビカ種の中には、ロブスタ(まれにリベリカ)の遺伝的な性質の一部を取り込んだ品種もあります。

1920年代に東ティモールでアラビカとロブスタが交雑してできた「ティモール・ハイブリッド」がサビ病に強く、これとカトゥーラなどを掛け合わせてカティモールと呼ばれる品種群が生まれました。
これらはカップの品質が低めと見られてきた一方、サビ病などに悩む生産者にとっては欠かせない品種でした。
袋で品種を確かめる
品種は、コーヒーの公正競争規約が袋の一括表示欄に書くよう定めている必要な表示事項には入っていません。
品種が書かれていない袋もあるので、専門店の商品説明やラベルに「品種:ブルボン」のように書かれているかどうかでご確認ください。
施行規則の銘柄名の例示では、ブルーマウンテンやキリマンジャロ、マンデリンなどが「アラビカコーヒー豆」と定められているので、銘柄名の付いた豆はアラビカ種だと読めます。
アラビカ種とロブスタでよくある疑問
- ロブスタは、アラビカより質の低い豆なのですか?
-
ロブスタはカップの品質を低く見られがちですが、適切に扱い、精製すれば、スペシャルティ市場向けの産品にもなりえます。
ブレンドに深いコクやパンチを与える役割もあるので、用途の違いと考えるのが自然です。
- 品種が同じなら、同じ味になりますか?
-
同じ品種でも、育った土地や標高、精製方法、焙煎度で味は変わります。
精製方法ごとの味の傾向は、別の記事「コーヒー豆の精製方法の違い」で扱っています。
品種は味の「土台」の1つと考えて、産地や精製方法とあわせて見ると、好みの豆を見つけやすくなります。
袋の説明は「種」から読む
商品説明に品種名が並んでいたら、まずアラビカ種かロブスタかを確かめ、そのあとでティピカやゲイシャといった品種名を見る順番にすると、情報の重さを取り違えません。
はじめて品種を意識して買うなら、ブラジルなど同じ国の豆で、品種名だけが違う2袋を比べると、違いがどこに出るかがつかみやすくなります。
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