売り場の札に「シティロースト」「フレンチロースト」と並んでいても、どちらが苦いのかは名前だけでは分かりにくいものです。
覚えておくのは「浅いほど酸味、深いほど苦味」という向きと、8段階の並び順の2つです。
しかも同じシティローストでも、全日本コーヒー協会は中煎り、UCCは深炒りに分けていて、区分の名前だけでは深さがそろいません。
焙煎度は「3つの区分」と「8つの段階」で呼ばれる
焙煎度は、大きく浅煎り・中煎り・深煎りの3区分に分けられ、さらに細かく8段階の名前で呼ばれます。
ここでの3区分は全日本コーヒー協会の分け方で、下の段ほど焙煎が深く、色が濃くなります。
| 名称 | 区分 | 色の目安 | 味の傾向 | 向く飲み方 |
|---|---|---|---|---|
| ライトロースト | 浅煎り | 黄みがかった小麦色 | 香りとコクはまだ薄い | ― |
| シナモンロースト | 浅煎り | シナモン色 | 青くささが残る | ― |
| ミディアムロースト | 中煎り | 茶褐色 | アメリカンタイプの軽い味わい | 軽めのストレート |
| ハイロースト | 中煎り | ミディアムよりやや深い | 酸味と苦味の間 | 喫茶店や家庭で飲まれるレギュラーコーヒーに多い |
| シティロースト | 中煎り | 鮮やかなコーヒーブラウン | 最も標準的な炒り方 | ドリップ、近年はエスプレッソにも |
| フルシティロースト | 深煎り | ダークブラウン | 苦味がはっきりする | アイスコーヒー、エスプレッソ |
| フレンチロースト | 深煎り | 濃い茶色 | 強い苦味と独特の香り | カフェ・オ・レ、ウィンナーコーヒー |
| イタリアンロースト | 深煎り | 黒に近い | 強い苦味と濃厚な味わい | エスプレッソ、カプチーノ |
名称・色・味・飲み方は、全日本コーヒー協会「焙煎・配合・粉砕」の説明がもとです。
ただし、ミディアムの「軽めのストレート」、ハイの「酸味と苦味の間」、シティの「ドリップ」、フルシティの「苦味がはっきりする」、フレンチの「濃い茶色」の5か所は、同協会の区分と前後の段階の説明から補った目安です。
区分の呼び方は団体によっても違い、シティは全日本コーヒー協会では中煎り、UCCでは深炒りに入ります。
UCCの「焙煎について」では、ハイを「中深炒り」、シティ・フルシティ・フレンチ・イタリアンを「深炒り」としているので、UCCの資料と見比べるときは8段階の名前の方で照らし合わせるとずれません。
8段階の名前は、英語のロースト(roast=焙煎)にもとづく呼び方です。

焙煎が進むと、味と香りはこう変わる
全日本コーヒー協会は、「一般的には浅炒りほど酸味が強く、深炒りになるほど苦味を感じるようになります」と説明しています。
同時に豆の種類によって違いがあるとも添えているので、同じ「中煎り」でも産地によって酸味の残り方は違います。
香りについては、生豆にはないコーヒー独特の香りは焙煎によって生まれ、焙煎直後に香気成分が最も多いとされています。
どの焙煎度でも、香りは焙煎のあと少しずつ抜けていくため、買ってから飲み切るまでの日数も味に関わります。
UCCは、開封後の豆は約1か月、粉は約1週間〜10日で飲み切るのが理想としています。
UCCによると、表面が油で光って見えるのは焙煎度によるもので、深煎りの豆ほど起こりやすいとされています。
区分ごとの特徴と、向いている人
8段階を全部覚えなくても、3区分の性格がつかめれば豆は選べます。

| 比べるところ | 浅煎り | 中煎り | 深煎り |
|---|---|---|---|
| 酸味 | 強い | 中くらい | 弱い |
| 苦味 | 弱い | 中くらい | 強い |
| 色 | 小麦色〜シナモン色 | 茶褐色〜鮮やかな茶色 | ダークブラウン〜黒に近い |
| 表面の油 | 目立ちにくい | 目立ちにくい | 光って見えることが多い |
| 主な名前 | ライト、シナモン | ミディアム、ハイ、シティ | フルシティ、フレンチ、イタリアン |
「表面の油」の浅煎り・中煎りの欄は、UCCの「深煎りの豆ほど起こりやすい」という説明から補った目安です。
酸味・苦味の「中くらい」の欄も、浅煎りと深煎りの説明の間を補った目安です。
浅煎り:酸味を楽しみたい人に
ライトとシナモンが浅煎りです。
ライトは香りとコクがまだ薄く、シナモンは青くささが残る段階とされ、酸味がいちばん前に出ます。
フルーツのような酸味が好きな人が選ぶ焙煎度で、酸っぱいのが苦手な人は最初の1袋には選ばない方が無難です。
中煎り:迷ったときの基準になる
ミディアム、ハイ、シティが中煎りです。
全日本コーヒー協会は、ハイを「喫茶店や家庭で飲まれるレギュラーコーヒーに多い」、シティを「最も標準的な炒り方」と紹介しています。
酸味と苦味のどちらが好きか分からないうちは、ハイかシティから始めると、次に浅くするか深くするかの判断がつきます。
深煎り:苦味とコク、ミルクとの相性
フルシティ、フレンチ、イタリアンが深煎りです。
同協会によると、アイスコーヒー用はフルシティまで加熱し、フレンチはカフェ・オ・レなどの欧風の飲み方に、イタリアンはエスプレッソやカプチーノに使われます。
この用途の説明を目安にすると、ミルクを入れる人や冷やして飲む人は、深煎りから選び始めると探しやすくなります。

焙煎度の呼び方には、店ごとの幅がある
焙煎度は、コーヒーの公正競争規約(全日本コーヒー公正取引協議会)の一括表示欄の必要な表示事項に入っていません。
そのため、どの色を「シティ」と呼ぶかは、各店・各メーカーの判断になります。
3区分だけを書く店、8段階の名前で書く店、「中深煎り」のように区分の間を表す言い方をする店もあります。
同じ「シティロースト」でも、店が変わると深さが少し違うことがあると考えておくと、買い比べたときに戸惑いません。
気に入った豆があれば、その店の中で「これより少し深いもの」「少し浅いもの」と頼むのが、ずれの少ない調整のしかたです。
焙煎度が書かれていない豆の見当のつけ方
焙煎度の表示がない豆でも、手がかりはいくつかあります。
- 豆の色: 小麦色〜シナモン色なら浅煎り、茶褐色〜鮮やかな茶色なら中煎り、ダークブラウンから黒に近ければ深煎り(全日本コーヒー協会の色の説明より)
- 表面のつや: 油で光って見える豆は、深煎りであることが多い(UCC)
- 用途の名前: 「アイスコーヒー用」とあれば、深めの焙煎であることが多い(「エスプレッソ用」は中煎りのシティも使われるので、深さの手がかりにはしにくい)
- 店の説明: 「酸味系」「苦味系」などの分類で並べている店もある
色の見え方は照明や袋の窓の色でも変わるので、迷ったら店の人に「浅め・深めのどちらですか」と聞くのが早道です。
ブレンドの焙煎度は2通りの作り方がある
ブレンドは、焙煎度の違う豆どうしを混ぜて作られることもあります。
全日本コーヒー協会は、ブレンドの焙煎方法を次の2つに分けて説明しています。
| 作り方 | やり方 | 特徴 |
|---|---|---|
| 単品焙煎のブレンド | 豆ごとに合った条件で焙煎してから混ぜる | 生豆の特徴を生かしやすい |
| 混合焙煎のブレンド | 焙煎前の生豆を混ぜ、まとめて焙煎する | 手間は省けるが、豆ごとに焙煎度を変えられない |
ブレンドの袋にある焙煎度は、できあがった豆全体としての目安と受け取っておくと、ストレートの豆と比べるときに混乱しません。
飲み方から焙煎度を選ぶ
味の好みがまだはっきりしないなら、ふだんの飲み方から逆算する方法もあります。
ブラックで、酸味も楽しみたい → 浅煎り〜中煎り(ミディアム、ハイ)
ブラックで、バランスよく飲みたい → 中煎り(ハイ、シティ)
ミルクを入れる、カフェ・オ・レにする → 深煎り(フレンチ)
アイスコーヒーにする → 深煎り(フルシティ前後)
エスプレッソ用 → シティ、フルシティ、イタリアン
(全日本コーヒー協会の焙煎度ごとの用途の説明をもとに、目安として整理したものです)
全日本コーヒー協会の説明では、エスプレッソにはシティ、フルシティ、イタリアンが使われるとされ、深煎りだけに限られるわけではありません。
産地にも酸味寄り・苦味寄りの傾向があり、全日本コーヒー協会はエチオピアに「強い酸味」、マンデリンに「強い苦味」を挙げています(焙煎度と産地を好みから一緒に引く表:味の好みで選ぶコーヒー豆の早見表)。
挽き目は焙煎度ではなく、淹れる器具で決める
焙煎度と混同しやすいのが、豆を挽く細かさ(挽き目)です。
挽き目は焙煎度とは別に、淹れる器具に合わせて選ぶものとされています(全日本コーヒー協会・UCC)。

| 挽き目 | 粒の大きさの目安 | 向く器具 |
|---|---|---|
| 極細挽き | 上白糖くらい | エスプレッソマシン |
| 細挽き | 上白糖とグラニュー糖の間 | 水出し(ウォータードリップ) |
| 中細挽き | グラニュー糖くらい | ペーパードリップ、コーヒーメーカー |
| 中挽き | グラニュー糖とザラメ糖の間 | サイフォン、ネルドリップ |
| 粗挽き | ザラメ糖くらい | パーコレーター |
店で深煎りの豆を粉にしてもらうときも、伝えるのは焙煎度ではなく「ペーパードリップで淹れます」のような器具の名前です。
家で挽く場合のミルの種類と、器具ごとの挽き目の合わせ方は、コーヒーミルの選び方で表にしています。
浅煎りと深煎りでは、カフェインの量は違うのですか?
カフェインの量は、焙煎度だけでなく豆の種類や使う粉の量、淹れ方でも変わります。
焙煎度だけで多い・少ないを言い切るのは難しいので、とりすぎが気になるなら、焙煎度を選び分けるより1日に飲む杯数で調整する方が確実です(1日の摂取量の目安は、詳しくはコーヒーのカフェイン量と1日の摂取量の目安)。
焙煎度の好みを見つける試し方
焙煎度の好みは、淹れ方をそろえて、焙煎度だけを変えて飲むのが近道です。
中煎りのハイかシティの豆を少量買い、これを基準にします。
同じ店でそろえると、焙煎度の呼び方のずれも小さくなります。
粉の量・お湯の量・湯温を毎回同じにします。
UCCのペーパードリップの目安は、1杯あたり中細挽きの粉10〜12g、お湯160ml程度、92〜96℃です。
蒸らしから注ぎ終わりまでの流れはハンドドリップのやり方で順に追えます。
「酸っぱい」「ちょうどいい」「苦い」のどれに近いかを、袋の名前と一緒にメモします。
酸味が強すぎたら深い方へ、苦味が強すぎたら浅い方へ、1段階だけ動かした豆を次に買います。
一度に2段階以上動かすと、どこが好みの境目かが分かりにくくなります。
決めきれないときは、ふだんの1杯を思い出す
焙煎度で迷ったら、この1週間でいちばん多く飲んだのが、ブラックかカフェ・オ・レ・アイスかを振り返ってみてください。
カフェ・オ・レやアイスが多かった人は、フレンチやフルシティの袋から手に取ると、ミルクや氷で味がやわらいでも物足りなさを感じにくくなります。
ブラックが多かった人は、中煎りのハイかシティを1袋目にして、そこから1段階ずつ浅く・深くと動かしていくと、好みの焙煎度にたどり着きやすくなります。







コメント